パソコン絵画徒然草
== 12月に徒然なるまま考えたこと ==
12月 7日(水) 「途切れがちの徒然草(2)」 |
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仕事もいよいよ最大の山場に差し掛かってきて、徒然草を書いている場合ではないのだが、「おぼしき事言はぬは腹ふくるゝわざなれば」と本家徒然草で吉田兼好も言っていることだから、再びオムニバス形式で幾つか記したい。 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 冬は、風景を描く者にとってつらい時期である。晩秋のあざやかな紅葉が終わり、自然はモノトーンのくすんだ風景になる。冷たい北風が吹き、戸外に出ようという気にならない。しかし、そんな冬にも絵にする価値のある美しい風景はある。ひっそりとたたずんでいるから我々にはなかなか察知できないが、寒さにめげず戸外に出かけた者に、自然はそっと美しい表情を見せてくれる。そんな宝物のような風景に出会い、絵にすることが、冬の風景画の魅力かもしれない。 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 私がパソコンを置いて絵を描いているのは、和室である。斜め前と横が外に面した障子になっており、冬の間は、空気の入替え以外は閉めっぱなしになっている。部屋の中から見ると、冬の弱々しい陽射しが、障子の和紙に柔らかい光を投げているのが見える。何気ない風景だが、とても美しい。日本人固有の美の感覚を育てて来たのは、日常のこんな何気ない美しさではなかったかと時々思うのである。 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 絵を描く能力は、血筋によるところがどの程度大きいのだろうか。 歴史に名を残している有名画家の両親は、画家でないことが多い。しかし、今の世の中、「蛙の子は蛙」というわけではないが、画家の子供が画家になっている事例を結構目にする。例えば日本画の世界では、上村松園、松篁、淳之の三代にわたる画家の家系は有名である。 絵の世界では、一般の商売のように、会社や店を親から譲り受け、従来通り事業をするというわけにはいかない。親の七光りで絵が売れるわけではないから、本人にそれなりの画才が備わっている必要があるはずだ。それをはぐくむのは、血筋なのか育ちなのか。自分の家系に芸術の才のある者がいない私は、できれば後者であってほしいと、いつも思っている。 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ さて、次にこの徒然草でお会いできるのは年末かもしれない。 |
12月28日(水) 「原点に戻る」 |
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慌しいまま年末になり、今年もまた1年が終わろうとしている。「休日画廊」の1年は、季節とともに始まり、季節の巡りに合わせて進行する。毎年そうだが、実に淡々とした世界である。 ただ今年の場合、5月にサーバーの引越しをし、長年悩みのタネだったホームページの容量問題に取りあえずの終止符を打った。「休日画廊」にとって大きな出来事ということになろうが、それ以外に取り立ててニュースはない。ホームページ容量が増え安心して制作に励める環境になったが、私の制作ペースそのものは変わらず、気が向いたときに無理せずに描いている。おそらく来年も同じだろう。さしたるニュースがないのが、「休日画廊」のいつもの姿である。 かくして、日本全国が回顧調モードに入る年末に、サーバーの引越しを除けば、さして思い出すべき大きなイベントはない。今年制作した1枚々々の作品を見ながら、それを描いたときの思いなり、出かけて行った場所なりをふり返る程度だが、それとても、ここに改めて記すほど一大イベントではない。全ては私の日常の中から生まれた作品群であり、めったに行けないところを訪問して制作したわけではない。こうして考えてみると、刺激の少ない淡々とした趣味だが、私にとっては、とても大切なものである。 世の中そのものの変化が激しく、仕事や家庭で様々な出来事が矢継ぎ早に起こる昨今、それに流されずマイ・ペースで続けていける絵画制作という趣味に、私はそれなりの価値を見出している。それは、いわば人生のペースメーカーであり、色々な事件が起きても、大きく歩調を乱されることなく過ごしていける貴重な道具立てである。 絵を描くという、この一見地味な趣味は、自分がいつも本来の位置に戻っていくために、驚くべき効果を発揮する。仕事が激しさを増して1週間がドタバタのうちに過ぎ、精神的に落ち着かぬまま週末にもつれ込んだときも、夜になってパソコンの前に座り絵を描き始めると、不思議と元の自分に戻っていくような気分になる。いわば、リセットされた状態になるのである。 私は、絵画制作を友にしながら、これまでずっとやってきた。たとえ絵筆が握れないほど忙しいときにも、心の中で絵を描いてきた。描きながら自分の本来の位置に戻り、そこから次の一歩を踏み出し続けた。これからもそうであったし、おそらくこの先も同じだろう。 年末は1年を締めくくる大切なときである。自分の元いた場所に立ち返り、道を確かめながら新たな一歩を踏み出すための準備の時期である。私も「休日画廊」のこの1年をふり返りながら原点に立ち返り、また新しい1年を始めたい。 皆様のご多幸をお祈りしながら、今年の活動を締めくくることにする。よいお年を。 |
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